魔法使いの箱庭は雨

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見上げた空はあいにくの雨模様だ。こんな日は気分がいい。
透明な雫が空から無数に落ちてくる様は、実に幻想的で、眩い。
美しい光景を閉じた瞼に焼き付け、雨音のオーケストラに耳を傾ける。
この時間は特別だった。
(相変わらず君の周りは雨ばかりだ。魔法を使ったのかい?)
先端に零れ落ちそうな真珠をぶら下げた緑の隙間から、フードをかぶった小人が顔を覗かせた。鈴の音を震わせたような不思議な声が、雨音と混ざり合い心地よい音色となる。
「魔法がこれほど美しく世界を彩れるなら、神様はいらなかっただろうね」
クスクスと無邪気に笑う少年は、小人を一瞥し、再び空を見上げた。
「見てご覧。本当にいるか分からない神を崇める気にはなれないが、この光景を作り上げた世界を心底僕は敬愛しているよ」
(雨なんかいくらでも降らせられるだろうに、相変わらず変な魔法使いだ)
小人は首を傾げると、そっと瞼を閉じて雨音に耳を澄ませた。
ファンタジー
公開:19/03/26 00:28

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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