孤独な鼓動

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カラの体を埋めるように、体温を求める。
どうしようもなく唐突に、自分の中に何もないと自覚するのだ。
そんなときは母親の背に抱きつき、ピタリと耳をあてる。
無邪気に、笑顔で、幸せみたいな顔をして。
「ねぇ母さん。大好き」
「はいはい、全く高校生になっても甘えん坊ねぇ」
振り返りもせず慣れた様子であしらう母に、なぜかどうしようもなく安堵する。けれど同時に、満たされはしない何かを自覚もするのだ。

特別重い過去もなければ、魔法少女になったりもしない。
ほんのちょっとの幸せや不幸を繰り返す普通の人間。
そんな代わり映えしない日々のはずなのに、どうしてかぽっかりと隙間が空いているのだ。

それは虚しさか、孤独か、寂しさか、悲しさか…

少しでも体の隙間がなくなれば、この隙間風のようにぬるく冷たい感覚もなくなるのではないか。
そんな淡い期待を胸にだいて、ただ目を閉じて背の鼓動に耳を傾けた。
青春
公開:19/03/25 23:57

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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