m駅の遺失物ノート

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無人駅のm駅。この駅には、“遺失物ノート”がある。

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19××年1月13日n町のk子。
宝物をなくしました。大事に大事にしていたのに。私のせいです。もう、どうしたらいいかわかりません。どうして…どこかにいってしまったのでしょうか。
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ノートを読み終え、ベンチに腰をおろすと、遠くで踏切の閉まる音が聞こえてきた。最終列車はもうすでに…。

電車がホームへやってきて、少年がひとり下車をすると、ノートに近づき、何かを書き始めた。

“母さん、ごめんね。僕は母さんの亡くしものになってしまったね。でも、母さんのせいじゃない。僕が悪いんだ。僕は、逝ったけど、今は幸せに暮らしているよ。だから、母さんも幸せになってください”

ノートには、こう記されていた。
月は静かに駅舎を照らしている。
その他
公開:19/03/25 23:06
更新:19/03/26 19:06
無くしもの 亡くしもの m駅の遺失物ノート

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



note https://note.com/sumire_ssg

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