花神異聞~影~

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「まったく、ニニギの奴」
「今度はゆっくりしていきなさい。飲み物くらい奢ってあげるから」
「そうさせてもらうよ」
それじゃあ、と店を後にするイサナ。
ふいに、足を止め振り返る。
「伊邪那美」
「ん?」
「その服、よく似合ってるよ」
「なっ」
かーっ、とイサナミの顔がほおずきの様に赤く染まった。
「バ、バッカじゃないの!」

冷たい風がイサナの頬を撫でていく。
「酔い覚ましにはちょうど良いか」
そう独り言ちて歩き出すイサナの前に、人影がズンっと立ちはだかった。
「イ・サ・ナ♡」
「百合!?」
「こんなところで何してるのかな?」
「何って、別に」
「ふふ~ん。ずいぶんと楽しかったみたいね? そんなニヤけた顔して」
「えっ」
「お話、聞かせてくれる?」
参ったな。
ため息をついたイサナの顔が、楽し気に歪んだ。

夢幻泡影。

この儚くもくだらない日々が、どうか少しでも長く、続きますように。
その他
公開:19/03/25 22:09
花神異聞~夢幻泡影~ SpecialThanks 創樹 『花神の庭』 川勢七輝 『貪婪骨董屋』 YOU

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