花神異聞~泡~

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ふと、イサナはイサナミの姿に見とれている自分に気が付いた。
楽しそうにお喋りをし、ころころと笑い、テキパキと動き回る。
その様子は、かつて暗い地の底で呪詛の言葉を吐き続けていたイサナミからは、想像もつかなかった。

――伊弉諾。憎い、憎い。
「伊邪那美」
――伊弉諾。妾は、そなたが。

「私もぜひ、アベルさんのお店に行ってみたいです」
「ええ、お待ちしていますよ」
「あ、よければ僕も一緒に」

そうか。
ニニギ、あなたはこれを僕に見せたかったのか。
今の、「生きている」伊邪那美の姿を。

「帰るか」
ドアに向かうイサナに、イサナミが声をかける。
「あら、イサナキ帰るの?」
「うん。用は済んだから」
「そう。ってあんた何しに来たのよ。まあいいけど。じゃあこれ」
「財布?」
「昨日ニニギが忘れていったのよ。さっきメールで、イサナがいたら渡しておいてくれって」

違った。ただのパシリだった。
その他
公開:19/03/25 18:46
次で終わりです もうちょっとだけ続くんじゃ

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