鵞鳥夫人推理張(七)
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「六十五点」
ぷうと膨れた妻の頬を、私は筆先で突付いた。
「まず『駒鳥殺人事件』西洋将棋(チェス)と童歌の二重錯誤は面白いが、人物と筋立てが散漫で読むのに疲れる。『橋姫伝説殺人事件』見立てが安直。題と本文が釣り合わない。『帆風亭の惨劇』と『辻斧狩り』は奇を衒い過ぎ。残忍に走るには相応の動機付けが必須。『左党女と香辛料』諜報に手を出す前に、歴史と政治史を零から勉強すべきだ。色物屋と呼ばれたいなら話は別だが、設定だけでなく、最後まで読者を掴む筆力を研く事」
「そんな酷評、能登(のりと)さんだけよ」
「鵞鳥鷲子(がちょうしゅうこ)は、いつから身内に飴を期待する、作家崩れに成り下がった?」
傷に塩を擦る様でも、言う事は言う。第一の心棒者として、彼女には常に文壇の花であってほしい。
「今度の『薔薇に眠る男』は、どの辺がお気に召さないの?」
「被害者の、だらしない浮気男の……妻の名前に『愛』が付く所」
ぷうと膨れた妻の頬を、私は筆先で突付いた。
「まず『駒鳥殺人事件』西洋将棋(チェス)と童歌の二重錯誤は面白いが、人物と筋立てが散漫で読むのに疲れる。『橋姫伝説殺人事件』見立てが安直。題と本文が釣り合わない。『帆風亭の惨劇』と『辻斧狩り』は奇を衒い過ぎ。残忍に走るには相応の動機付けが必須。『左党女と香辛料』諜報に手を出す前に、歴史と政治史を零から勉強すべきだ。色物屋と呼ばれたいなら話は別だが、設定だけでなく、最後まで読者を掴む筆力を研く事」
「そんな酷評、能登(のりと)さんだけよ」
「鵞鳥鷲子(がちょうしゅうこ)は、いつから身内に飴を期待する、作家崩れに成り下がった?」
傷に塩を擦る様でも、言う事は言う。第一の心棒者として、彼女には常に文壇の花であってほしい。
「今度の『薔薇に眠る男』は、どの辺がお気に召さないの?」
「被害者の、だらしない浮気男の……妻の名前に『愛』が付く所」
ミステリー・推理
公開:19/03/25 18:00
更新:19/03/25 17:11
更新:19/03/25 17:11
マザーグース
『一人の男が死んだ』
能登=ゴドフリー・ノートンは、
安寅愛梨(あどらあいり)
=アイリーン・アドラーの夫。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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