パラシュートガール

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居間では祖父が長押に飾られた、若く美しい祖母の写真を寂しげに見上げている。日頃私に鍛錬が足りないだの口煩く言う姿とは別人の様だ。

市の催しでミセス八街だった祖母が、特産品の落花生にちなみ落下傘でダイブするという無茶な企画。案の定、小型機から飛び降りてそのまま帰ってこなかった。十代で父を生んでから間もなくの事だった。

その祖母が今、白装束を着て庭に立っている。
「初めましてね。目元が私にそっくり」
「お婆ちゃん?嘘、写真のままだ…ど、どうやって今まで…」
「先生に助けられた後は霞を食べたりして上で暮らしてたの。何事も鍛錬よ」
先生?上で?それに霞ってまるで…
「あなたは随分老け込んだわね、鍛錬が足りないんじゃない?ほらいつまでも目を丸くしてないで行きましょ。見て先生よ」
真上にはいつの間にか一片の雲が浮かんでいて、ぼんやりと人影も見える。

こうして祖母は祖父を連れて天上へ帰っていった。
ファンタジー
公開:19/03/26 18:13
更新:19/07/11 23:07
仙人 千葉県八街市 楽曲お題シリーズ 第一弾

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