花神の庭.外伝~四葉泡沫(よもはのうたかた)上
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骨は、泉を沈んで行った。
朽ちた切片が崩れた家を脱したのが、何時かは知らぬ。誰か運んだか、風に舞い、芒(すすき)の根に触れたか知らぬ。底深く沈み眠る間に、抱いた恨みも、妬みも、狂うまで焦がれ欲した情も、泥を構成する石粒に成った。
黄泉の泥は、死者の罪業の溜り。軽い者はじき根を伝い、尾花を咲かせて新たな生を得る。重い者は、永き時を流離い、漸く地上へ還る。骨は己が何かも忘れ果てる永劫を、暗い泥に過ごした。
『真に宜しいのですか、大父神?』
『無論。それこそ吾(あ)が望みぞ』
懐かしい――懐かしいという感覚も朧な、けれどずっと聞きたかった様な声がする。
『吾とあれの子らを、永久に護り栄えさせる。誓いを果たさねば、吾は地の底に残した妻に顔向け出来ぬ』
『御身を八千々に砕き、地上総てに宿るなど。万が一、大母神の憎しみが解けようと、二度とお逢いにもなれますまい』
『構わぬ』
――いさ・な・き――?
朽ちた切片が崩れた家を脱したのが、何時かは知らぬ。誰か運んだか、風に舞い、芒(すすき)の根に触れたか知らぬ。底深く沈み眠る間に、抱いた恨みも、妬みも、狂うまで焦がれ欲した情も、泥を構成する石粒に成った。
黄泉の泥は、死者の罪業の溜り。軽い者はじき根を伝い、尾花を咲かせて新たな生を得る。重い者は、永き時を流離い、漸く地上へ還る。骨は己が何かも忘れ果てる永劫を、暗い泥に過ごした。
『真に宜しいのですか、大父神?』
『無論。それこそ吾(あ)が望みぞ』
懐かしい――懐かしいという感覚も朧な、けれどずっと聞きたかった様な声がする。
『吾とあれの子らを、永久に護り栄えさせる。誓いを果たさねば、吾は地の底に残した妻に顔向け出来ぬ』
『御身を八千々に砕き、地上総てに宿るなど。万が一、大母神の憎しみが解けようと、二度とお逢いにもなれますまい』
『構わぬ』
――いさ・な・き――?
ファンタジー
公開:19/03/26 12:00
もう一つの結末。神々の約束
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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