リバースデー・フラワー

誕生日だろうが、子供を抱える主婦の生活は戦争だ。ご飯作って食べさせ、弁当も作って持たせ、着替えさせて送り出し、自分も着替えて仕事。朝ご飯は運転しながら。掃除と洗濯は帰ってから。ゴミ袋持って玄関を出る。
「行って来ます」
今、家には大黒柱が居ない。
正確には機能してない。カーテン閉め切って真っ暗な部屋、炬燵に頭だけ出して横倒し。何年目だっけ――考えるのも疲れた。
仕事しか知らない奴から、仕事取り上げた副作用。初めは病院も通い、あらゆる薬も療法も試した。病気だから。解った気で引き受け、背負って背負って、自分も折れた。相手は育たない赤ん坊。怒る労力も惜しい。情より義務で養ってる。

彼岸明けなのに。さらさら降る雪を睨む。薄化粧のベランダに逆さのバケツ。何の真似だ。八つ当たりに除けた下、クロッカスの黄色い花。
いつかの誕生日、二人で植えた。たかがこんな事で、まだ私は戦える。
「……行って来ます！」