ゾーラヒュッテの庭で

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その老人は寡黙だが、目が全ての人間の浅はかさを見たような鋭い眼光を放つ。

1981年 インタビュー
大きな金木犀の横で、のんびりタバコをくゆらせる親衛隊の将校たち。
収容所の近くの『ゾーラヒュッテ』と呼ばれる保養所の写真だよと老人は教えてくれた。
「私はね写真技師だったからゾーラヒュッテに行き、収容所の親衛隊や女性部隊のメンバーらがここで楽しげに休暇を取ってる様子を撮影したんだ。そこの金木犀は見事でね。この場所は好まれてよく写真を撮ったよ」
その胸中は僕の想像なんて到底おいつかないものであろうと、そう思っただけで息苦しくなる。
「だから私は金木犀の匂いが嫌いだよ。金木犀は将校のタバコの匂いがする」
その時の風景を思い出したのをかき消すように、老人はゆっくりコーヒーを一口飲んだ。
その腕の袖の少しめくれたところに数字が彫ってあった。

記事のタイトルは「金木犀が嫌いな理由」に決めた。
その他
公開:19/03/24 12:04
スクー タバコ臭い金木犀 ホロコースト 負の遺産

さささ ゆゆ( 東京 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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