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「な、叔父ちゃん言ったとおりやろ。この辺じゃ正月には蛸をあげるんや」
羽子板を振って甥っ子が言う。僕は立ち尽くしたまま、その光景に見入っていた。
「いやあ、噂には聞いていたが壮観だな」
糸に繋がれて空一面に浮かんでいるのは、紛れもなく海で見る蛸だった。中には連蛸だってある。
「いやあそれにしても、あれはどんな種類の蛸なんだい?」
「そんなん刺し身にする蛸と一緒や。それを蛸師があそこまで育てんのや」
「いやはや名人芸だね。でも普通の蛸と一緒ということは」
「ほらきたで!あっちへ急がんと」
僕は甥っ子に手を引かれ軒下に入り見物を続けた。
「あ、叔父ちゃんさっきの分や」
そう言うと甥っ子は、空から降ってきた墨を付けた筆で僕の目を丸く囲った。
ファンタジー
公開:19/03/24 00:15
更新:19/03/31 23:02

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