点字の夫

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「あれ、吹き出物?」
ぐうぐうと横で眠る夫の顔に、ぶつぶつと丸い点ができていた。
「吹き出物にしては変ねぇ」
自然にできたにしては、妙に規則的だ。
それは所々飛んではいるものの、六つのグリッドに沿った「点字」のように見えた。
「ウフフ、点字って、そんなワケないわよねぇ」
でもあたしは、その規則的に並んだ吹き出物が、何かの言葉になってるのではないかと期待して、ベッド傍に置いていたスマホで調べてみた。
Wakipediaに記載されている「かな表」と見比べる。

「ダンナ ウワキチ⋯⋯」
旦那浮気中!?
「あなた、浮気してるの!?」
あたしはゆすり起して問いつめた。
「えっ、なに言ってるんだよ」
「だって顔に点字が⋯⋯」
「アハハ、顔に点字が浮かぶなんてある訳ないだろ」
そう言われてみれば確かにそうだ。

だがしかし、夫の顔には新しい点字が浮かび始め、それは「トナリノ オクサン」と読めた⋯⋯。
ミステリー・推理
公開:19/03/23 21:44
更新:19/03/24 00:29

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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