鵞鳥夫人推理張

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「では、やはり鈴目が殺した?」
「自供してますし、凶器の弓も出ましたから」
喫茶屋の後席、物騒な会話が幕を開け、私は其方へ気をやった。
「第一発見者の羽江と踏んだのに、裏を搔かれた」
「私は血痕の付いた皿で、坂名が主犯と見ました」
私立探偵の職業柄、事件には慣れているが、これは猟奇臭い。
「死体の白装束に兜の謎は?」
「無視無視。風で落ちただけ。意味深な墓穴も、福老寺のシャベルも、仔細は現場の深山硝子館が物語る、と」
「付き人の日張は?」
「命拾いです。松明の火は運良く消えて。結局、喪主が愛人の鳩子で、戸尾、佐才夫妻、津組に王氏が列席と……」
随分入り組んだ話だが、肝心の被害者不在では据わりが悪い。身を乗り出した私は、前から椅子を蹴られ跳び上がった。
「お行儀悪くてよ、写六先生」
「失敬。ですが夫人、作家の好奇心が疼きませんか?」
「いいえ。だって今の話、私が書いた『駒鳥殺人事件』だもの」
ミステリー・推理
公開:19/03/24 00:00
更新:19/03/23 21:49
着想:マザーグース 『誰が駒鳥殺したの』 写六=シャーロック(笑)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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