心を入れ替える

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「今度こそ心を入れ替えて卒業するよ」
「あんたの心って、プリンターのカートリッジみたいね」
去年はSIMカードだった。一昨年は畳だったか。
「今度は違う」
「何が?」
「切迫感」
姉貴は笑いながら、ちゃぶ台を打って立ち上がる。そして、冷蔵庫に手を伸ばした。
「もう一缶もらうよ」
「自分で買ってきたんだろ」
「一応、あんたにあげたもんだからさ」
姉貴は再びあぐらをかいた。
「去年、SIMカードって言ったじゃない」
覚えてんのかよ。毎年仕込んでんだろ。
「なんか違うよね。主体がSIMなんだから。でも、そうなるとあんたの心ってなんなわけ?」
あれ、本気説教モード?泣きそうな笑顔が胸を打つ。
4月で大学8年生。どうにか単位をかき集めないと退学だ。もう酒を抱えた姉貴が訪ねて来ることもないだろう。
毎年この時期を密かな楽しみにしていた。悲しみの涙で濡らすわけにはいかない。俺は最後の心に入れ替えた。
青春
公開:19/03/23 18:02
更新:19/03/23 18:05

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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