内臓二十物語 第二臓(食道)

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食道の辺りが詰まっている感じがする。こみ上げる盛大なゲップと共に、頭の上の方でポーンと、シャンパンのコルクを抜いた時のような音が聞こえた。
頭のてっぺんがスースーする。手で触ると穴が開いていた。驚いて病院に駆け込んだ。
「あー、食道が伸びて頭のてっぺんまで繋がってますねえ」
「ええ?」
「ここに食べ物を放り込むと胃まで運んでくれます」
そう言って医師がパンちぎってポンと放り込んだ。何かが通過したが食べた気がしない。
「ストレスですね。言いたいこと言わずに飲み込み過ぎると、食道が詰まって、他に出口を求めちゃうんですよ。薬出しますから」
薬の効き目か、それから一ヶ月、溜め込んだ不満を、夫に向かって洗いざらい吐き出した。頭のアナは塞がり、食道は元通りになった。
「これからは言いたいことは溜め込まないことにするわ」
夫に向かって晴れやかな笑顔で言うと、唸った夫の頭から、ボンという破裂音がした。
その他
公開:19/03/25 00:59
更新:19/04/03 20:32
内臓二十物語 第二臓 原案そるとばたあ

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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