鵞鳥夫人推理張(四)

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「かくして『安藤龍理事の銅像損壊事件』は、用務員、坊殿四十路の鬱憤晴らしで、無事解決したわけであります」
ここぞとばかり声を張り、私は報告書を読み上げた。万雷の拍手が谺する。
「素晴らしい!よく犯人の不在証明を崩した、須藤君」
「大手柄です、警部!捜査本部一同、迷宮入りを覚悟しました。流石は本庁の星!」
賞賛は嬉しいが、事件解決の立役者は私ではない。
「お言葉ですが、凶器とされた理事長室の斧と、銅像の傷のずれを発見したのは……」
「迷惑探偵の写六は、偶然便所と倉庫を間違え、鍵の紛失に気付いたんだろう」
「ですから、合鍵を所持する坊殿が、自前の斧を犯行に使い……」
「良いじゃないか、とにかく今夜は祝杯だ!」
何故皆、写六先生の件に触れると、揃って話を折る。縄張りを振り翳して捜査が捗るものか。私、須藤怜人は、名探偵写六の活躍を世に知らしめる語り部となり、更なる平和維持に貢献して行く所存である。
ミステリー・推理
公開:19/03/25 00:00
マザーグース 『リジーボーデン(縄跳び歌)』 ※この歌は、実在事件が 元になったとされております。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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