予約の後輩くん(14)

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水瀬君と、林さん。
この組み合わせを見ると、否が応でもこの前の給湯室でのことを思い出してしまう。
私は林さんから逃れたくて水瀬君の手を振りほどこうとしたけれど、水瀬君の力は思いがけず強くて、腕はびくともしなかった。
目を逸らすと、水瀬君は私の手首を掴む力を少し緩めて、そのままするりと私の手に指を絡めた。
「林さん。僕たちこれから用があるから、悪いんだけど、もういい?」
水瀬君の言動に林さんは口をぱくぱくさせてから「やっぱり、そういう……?」と呟いたけれど、水瀬君は否定も肯定もせず、私の手を握ったままさっさと歩き始めてしまった。

「ちょ、ちょっと、水瀬君」
「……キャンセル」
「え?」
「さっき言ってたひと月まで、まだ一週間あります。……本当は最低一ヶ月は我慢するつもりだったけど、仕方ないです」
水瀬君は真面目な声で言って、くるりと振り返った。

「先輩。告白されるなら、どこがいいですか」
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公開:19/03/24 21:02
予約の後輩くん

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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