鵞鳥夫人推理張(三)

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「鵞鳥先生!」
息せき切った犬の様な足音に、私は思わず首を竦めた。
「やはり、鵞鳥鷲子(がちょうしゅうこ)先生!」
「街で会う時は、安寅愛梨(あどらあいり)と、申しましたわよ、須藤警部」
夫が酔って付けた筆名。今更ながら、時々後悔に襲われる。例えばこうして、街中で呼ばれる場面。
「いかん、つい嬉しくて。どうぞ御寛恕を、安寅夫人」
須藤怜人警部。警察らしからぬ善良が長所にして欠点。かの写六先生を名探偵と信じ、捜査協力を依頼する。その名探偵の活躍が、概ね同行の医師のお陰と、いつ気付くのやら。
「……事件かしら」
犬が尻尾を振った顔。向こうが留守だったと、語るに落ちた様。
「はぁ、その。塀の下に、ばらばら……」
「変死体!?」
「違います。旅館の汎冨亭(はんぷてい)の塀に、大量の卵を投げ付ける悪戯が」
殺人でなくて残念だけれど、何かの話の種に。私は愛想良く彼に随った。
「宜しいわ。参りましょう」
ミステリー・推理
公開:19/03/24 20:00
更新:19/03/24 19:59
マザーグース 『ハンプティ・ダンプティ』 安寅愛梨=アイリーン・アドラー 須藤怜人=レストレード警部

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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