しっているしらず
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俺の親しらずが痛みだしたのは、妻が安定期に入った頃だった。
面倒で放置してしまっているうちに虫歯になってしまったそれを、妻に背中を押されて抜歯した。
その後痛みもひどくなく、気分よく日常生活を送っていると、ふと、穴のあったところに小さな引っ掛かりを感じた。
「ああ、これは妻しらずですね。すぐに抜けますよ」
歯科医はそう言って、麻酔もそこそこに俺の口の中から小さな歯のようなものを引っこ抜いた。
けれどその小さな歯状のものは、翌日もその翌日も生えてきた。
「ああ、これは姉しらずですね」
「これは上の妹しらずです」
「これは真ん中の妹しらず」
「下の妹しらず」
歯はどういうわけか、俺の家族構成をなぞるように生えてきた。
そうして七回目の診察日。
「ああ、これは……」
歯科医の言葉を聞いて医院を出た俺は、店に飛び込むと、リボンのついたピンクのベビードレスを興奮気味に掴み取った。
面倒で放置してしまっているうちに虫歯になってしまったそれを、妻に背中を押されて抜歯した。
その後痛みもひどくなく、気分よく日常生活を送っていると、ふと、穴のあったところに小さな引っ掛かりを感じた。
「ああ、これは妻しらずですね。すぐに抜けますよ」
歯科医はそう言って、麻酔もそこそこに俺の口の中から小さな歯のようなものを引っこ抜いた。
けれどその小さな歯状のものは、翌日もその翌日も生えてきた。
「ああ、これは姉しらずですね」
「これは上の妹しらずです」
「これは真ん中の妹しらず」
「下の妹しらず」
歯はどういうわけか、俺の家族構成をなぞるように生えてきた。
そうして七回目の診察日。
「ああ、これは……」
歯科医の言葉を聞いて医院を出た俺は、店に飛び込むと、リボンのついたピンクのベビードレスを興奮気味に掴み取った。
その他
公開:19/03/21 23:11
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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