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野球中継を見ながら、大きくなった妻のお腹に手を当てる。
「大きくなったらプロ野球選手になれよぉ」
オリックス対千葉ロッテ。
スコアは3-3。
10回裏2アウト満塁。打者はイチロー。ゲームはクライマックスだ。
イチローはバッターボックスでいつものようにゆっくりとバットを回す。こんな場面でもイチローはいつもと変わらない。
「よし。イチローが三振したらお前は最高の打者になる。オリックスが勝ったら最高の投手になる」
私は野球の神様に願掛けした。
カウント2-1からの4球目。イチローのバットが空を切る。しかし捕手が後逸。イチローが一塁に走った。振り逃げだ。三塁ランナーがホームを踏んでゲームセット。
それは日本プロ野球界史上初のサヨナラ振り逃げだった。
「ハハハ、三振したのに勝っちゃったよ…」
興奮した私は震える手で妻のお腹を撫でた。
「お前は最高の打者で最高に投手になるぞ。早く産まれてこい、翔平!」
その他
公開:19/03/21 22:12
更新:19/03/22 07:06
1994年6月12日の試合 その翌月、大谷翔平誕生

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ショートショートって難しい。
最初の頃は400字は短すぎるなんて思ってましたが、色々書くうちに400字に無限の可能性を感じるようになりました。

読んだ人の心が少しでも動いたらいいな。何かを感じてくれたらいいなと思って書いてます。

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