彼岸。凸

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寝坊した……!車をかっ飛ばし、始業と同時に滑り込む。
「おはようございます!」
皆の視線が白い。彼岸は葬儀屋の書き入れ時。墓参の注文が立て込み、製作と配達に大わらわだ。特に今日は中日(春分)。天候には恵まれなかったが、明らかに戦争の様相を呈している。

気合いを入れてエプロンを締めた。まだ皆じろじろ見る。
「嫌だなぁ、皆。幽霊でも見た顔して」
黒い冗談で空笑い。何だこのアウェイ感。つい足元を確かめる。
「お前、まさかと思うけど、迷った?」
「いえ、遅れたのは迷子じゃなくて」
先輩が微妙な距離を取る。ますます場違いな気分。
「だったら墓に行け。今すぐ」
「酷い。そんな殺生な……。じゃあ何ですか?僕は出社途中で事故に遭い、死んだとでも!?」
沈黙。ひそひそ声。まさか、本気?
「アホか。霊園の墓花売り、今日お前の当番だろ!」
僕の顔は、幽霊も真っ青の蒼白になった。
完全に墓穴を掘ったらしい……。
ミステリー・推理
公開:19/03/21 20:09

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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詩集
君に伝えたかったんだ。

いつも本当に、ありがとうございます!

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