レタスのレタ助

6
8

レタスのレタ助は、太陽の光も土の匂いも知らない。
LEDランプが並ぶ水耕栽培工場で彼は育った。
程良く育った頃、彼は仲間たちとともに工場から出荷された。
暗い箱の中、レタ助は不安で潰されそうになる。
そして惣菜工場へ着いた。
翌朝、レタ助は冷蔵庫から出され、外葉を剥かれる。
次に白衣を着たオバサンに問われ、レタ助は生産工場名 、管理番号、出荷日を答えた。
オバサンは無表情にレタ助を掴むと、半分に切り芯を抜き、手際良く次のコンベアに流した。
レタ助は叫ぶ間も無かった。
コンベアは進む。
洗ったあと、刻まれた野菜達は数種類混ぜてパックされ、サラダになった。

高度に進んだ遺伝子操作技術は、植物に意識や記憶を持たせる事に成功した。
必要な養分を自ら要求する作物、産地偽装の防止で、出自を答える作物、都合の良い様に改良が進む。
この時人類は、野菜に感情が生まれている事に、未だ気づいていなかった。
SF
公開:19/03/23 10:14
更新:19/03/24 09:27

みのる( 愛媛県産、現在広島県に生息。エサを求めて中四国の人里に出没中。 )

心に響く爽やかなお話しをお送りしたいのに、ああそれなのに・・・

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容