内臓二十物語 第一臓(心臓)
28
21
どっくんは赤犬だ。
その日、姉ちゃんは眠ったまま死んだ。どっくんはどっから来たのか、姉ちゃんの胸の上で小さくうずくまって震えていた。テラテラして毛も生えてない。赤い子犬。
父ちゃんや母ちゃんは、どっくんを死んだ姉ちゃんの代わりみたいに可愛がった。
僕は知ってる。子犬のふりしてるけど、あれは姉ちゃんの心臓だ。胸から抜け出るのを見たんだ。
どっくんは変な目付きで僕らを見る。様子を窺うような目。
夜中、ふと目覚めると、どっくんが、母ちゃんの胸に頭を突っ込んで心臓を食ってた。心臓を食って、代わりに自分が収まろうとしてるんだ。声を上げて飛びかかろうとしたら、どっくんは体を震わせ、ドクドク脈打つ赤い塊になり、母ちゃんの胸の中にスッと消えた。
次の朝、母ちゃんはいつもの母ちゃんだった。そうか、姉ちゃんも既に心臓を食われてたんだ。僕は…
どっくんと心臓が鳴る。
赤い子犬がズルリと胸から這い出した。
その日、姉ちゃんは眠ったまま死んだ。どっくんはどっから来たのか、姉ちゃんの胸の上で小さくうずくまって震えていた。テラテラして毛も生えてない。赤い子犬。
父ちゃんや母ちゃんは、どっくんを死んだ姉ちゃんの代わりみたいに可愛がった。
僕は知ってる。子犬のふりしてるけど、あれは姉ちゃんの心臓だ。胸から抜け出るのを見たんだ。
どっくんは変な目付きで僕らを見る。様子を窺うような目。
夜中、ふと目覚めると、どっくんが、母ちゃんの胸に頭を突っ込んで心臓を食ってた。心臓を食って、代わりに自分が収まろうとしてるんだ。声を上げて飛びかかろうとしたら、どっくんは体を震わせ、ドクドク脈打つ赤い塊になり、母ちゃんの胸の中にスッと消えた。
次の朝、母ちゃんはいつもの母ちゃんだった。そうか、姉ちゃんも既に心臓を食われてたんだ。僕は…
どっくんと心臓が鳴る。
赤い子犬がズルリと胸から這い出した。
その他
公開:19/03/22 19:56
更新:19/04/03 20:32
更新:19/04/03 20:32
内臓二十物語
第一臓
人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。
ログインするとコメントを投稿できます