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その日、いつも通りの退屈な仕事を終え、公園で一人花見をしていた。視線の先で何か光った気がして、重い腰を上げた。
「これは……」公園の真ん中に、懐かしさを感じさせる玩具のベルトが落ちていた。「変身ベルト、かな?」
それを拾い、あたりを見まわす。野良犬が一匹寝ているだけで誰もいない事を確認した俺は、ベルトを腰に巻き、変身ポーズをとってみた。
「変身っ!」
できるわけがない。大人げない行動に恥ずかしさが込み上げてきた。それを誤魔化すかのように、俺は野良犬の首にベルトを巻いてみた。
おや、なかなか似合うじゃないか。野良犬も嬉しそうだ。

あの時、ボクは「首に変なもの巻き付けやがった!」と怒っていた。
でも、今では嬉しく思う。
あの後「おまえ、よく見ると可愛いな。うち来るか?」と頭を撫でられた。きっと彼も生活に変化を求めていたのだろう。
この春、ボクは変なもののおかげで、野良犬から飼い犬に変身した。
その他
公開:19/03/20 20:00
更新:19/03/20 23:50
新生活

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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