鼻炎薬

「あー、鼻水が止まらない……」

娘が鼻をすすりながら帰ってきた。

「風邪ひいたの？」
「いや花粉症かなあ」

娘は鼻をかんで答えた。

「お母さん、いつもの鼻炎薬ってまだある？」
「薬箱にあるわよ」

はーい、と答えて娘は薬箱を取りに行った。

「あった！でもこれ１回何錠だっけ？」
「それいつも聞くわよね。１錠よ。箱読んだらわかるでしょ」
「いやーめんどくさくてさあ」
「あとそれ、食後に飲むやつじゃないっけ。読んでみなさい」
「えー」

娘はぼやきながら、ブツブツと箱のうら面を読んだ。
そして突然声を上げた。

「あ！お母さん違うじゃん！15歳以上は２錠だって！」
「あ……」

そっか……ずーっと１錠だったのにね……

「もう２錠飲めるのね……」
「なに？」
「なんでもない」

私は笑ってごまかした。
なになに〜？、とちょっかいをかけてくる娘の肩は、いつのまにか並ぶ高さになっていた。