スタバにて

スターバックス渋谷マークシティ店に高級なスーツを着こなした紳士がやって来た。
スネークウッドの高級ステッキを持ち見るからに高そうな金色のパテックフィリップの腕時計をしていた。
彼は近くの空いた席に着くと店員に注文した。
「コップを一つ」
「あの、ご注文はあちらの注文カウンターでお願いします」
「まあいい」
それきり紳士は動かない。
あまりにも紳士の堂々とした態度と身なりの立派さに気おされ、店員は小さな紙コップをテーブルに置いた。
紳士がエルメスバーキンのバッグから取り出したのはコカ・コーラのペットボトルだった。
キャップを開けると、バッグの中で揺られたせいか中身が大きな音を立てて噴き出し、彼の顔と言わずメガネや洋服にまでかかった。
平然と彼はポケットからアルマーニのハンカチを取り出し顔を拭くとコーラを紙コップ３杯飲み干し小さくゲップをすると、あっけにとられている店員を尻目に店を出て行った。