シェルター

僕の家はシェルターだ。地震が起きたって壊れやしない。この家をとても気に入っているので、生まれてからずっとここに住んでいる。外で危ない事件なんかが起きたって、家に帰れば安心だ。人目につかない場所に建っているし、壁は厚く頑丈で、扉だって一度閉めたらちょっとやそっとでは開かない。外で危ない人になんか出会ったらいけないので、なるべく外出は避けている。家にいさえすれば、怪我一つせずに済むのだ。
そうも言ってられなくなったのは、あの怪獣が僕の家にやってきてからだ。ヤツは壁ごと扉をこじ開けると、ずかずかと土足で入ってきた。ノックくらいしてほしいものだ。絶対に安全だと思っていた僕の家はいとも簡単に壊された。
何を言っても出ていこうとしなかったので、僕たちは一緒に暮らすことになった。ヤツの淹れる珈琲はやたらと美味い。今度街へ出かけたら、珈琲豆とケーキでも買ってきて、あの扉がどれだけ頑丈だったか話でもしよう。