笑いの壺

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あるペルシャの遺跡から、九世紀頃とみられる古い壺を発掘した。
魔法のランプの類いと同じく、壺中に精霊を宿していたらしく、きゅっきゅと表面を磨くとたちまち魔神が現れた。

「わしの名は笑いの壺じゃ!」
「という事は、ジョークの達人だね?」
魔神はふふんと鼻を鳴らし、
「わしのジョークは、当時の王侯貴族のはらわたを捩らせたもんじゃわい!」
と自信満々のご様子。
さっそく大学の人間を集めて、講堂で魔神のジョークを披露してもらう事になった。
皆の期待が高まる中、魔神は言葉を発した。
「アルミ缶の上にあるみかん!」
ドヤ顔で続けた。
「内臓がないぞぅ!」
さらに続けた。
「マダガスカル島でまだ助かる!」
場内に水を打ったような静けさが広がった。

彼の名誉のために言っておこう。
このジョークは、一千年も遡れば間違いなく最上級のものに違いない。
だがしかし、無情にも笑いのツボがズレてしまったのだ⋯⋯。
ファンタジー
公開:19/03/21 14:56
更新:19/03/22 00:20

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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