桜の花弁が舞う頃に

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花見の場所取りは新入社員の仕事らしい。公園は広大でどこがいい場所なのか分からない。
「桜の妖精がいるから訊けばいい」
そんな先輩のアドバイスに悪意を感じる。
「どんな人なんですか?」
「妖精っぽい人だよ。見ればわかる」
…はいはい

茣蓙を抱え公園をウロウロ。
ふと足を止めた。
「桜の妖精というのはあなたですか?」
思わず声をかけてしまったのは、それほどに彼女は妖精っぽかった。
満開桜の袂、そよぐ春風に揺れる長い黒髪。

ぇっ?と驚く彼女は次にクスクスと。
「ナンパかしら?」
「ぁ…いえ、場所取りで…その…」
しどろもどろで。
「いいわ新人君。時間潰しに付き合ってあげる」
茣蓙を広げ、彼女は僕の新生活の不安を聞いてくれた。
先輩達が、おーい、と手振るのを見るまで。

「いい場所取ったな」
「この人のおかげです」
「そっか…お前も会えたか」

桜の花弁だけがつむじ舞う。
頑張れ…と聞こえた。
ファンタジー
公開:19/03/20 23:20

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

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