知らない

「もう、二十歳ね」
母は私を見ながら微笑んだ。
「やっと言える時が来たわ。私、本当のお母さんじゃないの」
少しの沈黙の後、私は口を開いた。
「大丈夫、私にとっての母さんは、母さんしかいないから」

突如、母は厳しい目で私を睨んだ。
「今すぐ私の前から消えて」
「え？」
「あんたの母さん、父さんと浮気してあんたを産んで死んだのよ。私の夢はあなたを幸せに育てて、そこから絶望に突き落とす事」
一瞬、母が鬼に見えた。
「どういう、事？」
「ね、あんたの母さん。なんで死んだか知りたい？」

突然、父が大声をあげた。

「カット！」

父が感嘆の声を上げた。
「凄い脚本だな、これ」
「ありがと、自信作なの。本当の両親に読んでもらうなんてリアルにイメージ湧くわ」
母さんは浮かない顔をしている。
「どうしたの？」
「由美…教えて」
「何？」
「どこまで、知ってるの？」

私は、知らない。
フリ。