七の白南風(しらはえ)

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またしても……過ぎた。
妻の渋面を想像し、軽い憂鬱を花束に吹き掛ける。
『私は忘れた事ないけど』腕組みでふんぞり返った胸も目に浮かぶ。結局七日遅れたな。こればかりは不可抗力だが。

香気を含んで花が揺れる。ホワイトデーとは言え、別の色が良かったか。『これしか無かった』と弁解すれば、『白々しい』と睨むだろう。『他に言う事ないの』と。毎度毎度、憎まれ口しか叩かない女。
『遅れて済まん』と謝れば、『気持ち悪い』と引くだろう。約束を守った事も、期限に間に合った事も、こうして何かやった事も一度もない。笑うより罵り合う時間が圧倒的に多かった。

水に流す事は出来なくても、風に乗せる事は出来るか。
梅雨を払う白南風の様に、七と七掛け、四十九年分の『愛してる』をお前に。
まさか今更『来るな』とも言うまい。『鬱陶しい』と不貞るか知らんが。
ようやく直接渡せる。遅れた合計七年と七日は、それで清算してもらおう。
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公開:19/03/21 03:14
更新:19/03/20 23:09
七日遅れのホワイトデーのネタ お爺ちゃんのラブ・バラード

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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