点字ブロック

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仕事中、突然目が見えなくなった。

「うわっ、目が!?」
部長の声だ。
「えっ、停電!?」
同僚のK子だ。
盲人になったのは俺だけではない。
あちこちから同様の声が聞こえ始めた事から、何らかの理由で社にいる全員の目が見えなくなったらしい。
「とりあえず外に出て助けを呼んできます!」
俺はゆっくりと廊下に出た。
足裏に何かゴツゴツしたものがあった。
手で触ると、丸いドットとライン状の凹凸があった。
「点字ブロック?」
そう、これは明らかに点字ブロックだが、社の廊下にそんな物があるはずはない。
とはいえ、この状況では他に頼る物はない。
俺は点字ブロックの指示に従い、廊下を歩き階段を下り、ビルの外へ出た。

「誰か助けてぇ!」
大声で叫んでも返事はない。
ビルを囲むように丸いドットの合図が触れる。
異様な強風が下方から吹いて来るのを感じ、俺は点字ブロックの向こう側に行くことができずにいた──。
ミステリー・推理
公開:19/03/19 20:22
更新:19/03/19 20:23
ショートショートカレンダー 3月18日は点字ブロックの日

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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