ダイヤモンドは傷つかない

今日も部長に辞表が叩き付けられる。部長はそれをにこやかに受け取った。
さすがブラック企業の部長クラスとなるとどんな暴言を吐かれようとも傷つかない。まさに鋼鉄の心だ。
部長は今日も部下に無理難題を押し付ける。そのくせ自分は仕事をせず、責任丸投げな上、功績だけは自分のものにする。最低な上司だ。
そんな部長が社長に就任した。
当社は実力があれば誰でも社長になれる。
部長は心の強さを「ダイヤモンドの心」と認められ社長となった。
「ああ…これでやっと解放される…」
疲れ切った表情で会社を出る元社長もダイヤモンドの心を持つと言われた豪胆な人だった。
その人が１ヶ月でああなるとは元社長は一体どんな仕事をしていたんだ？

１カ月後。社長となった元部長は抜け殻のようになっていた。
ダイヤモンドは傷つかないというが、あれは金槌で叩けば簡単に砕ける。
どうやら社長の仕事で元部長のダイヤモンドの心は砕けたようだ。