案の定、幽霊

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結婚記念日に死んだ女房、翌日には帰っていた。私は涙を流しながら抱きつこうとしたが、案の定、幽霊だった。
飯は食わない。家事もしない。それでも、いてくれるだけでいい。本当か?
目覚ましをひっぱたいて、眠い目をこする。女房はまだ敷き布団の上に横たわっている。死んでしまったのかと思って肩を揺すろうとするが、私の手はすり抜けて枕を掴む。
「起きろぉっ」
声を上げてしまうことも増えた。女房は驚いて目を開く。
触りたいのだ。おはようと髪をぐちゃぐちゃにしたい。私の湯呑みを割って舌を出す彼女の頭を小突きたい。時には腕を回したい。
そして、私たちの特訓がはじまった。私が頭を撫でたら髪を乱すこと。私が頭を小突いたら舌を出すこと。抱き枕などというものをはじめて購入した。こいつに抱きついたらプロジェクションマッピングさながら映り込むこと。
「成仏できないじゃない」
女房は笑み、私は必死に抱き枕を捕まえた。
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公開:19/03/20 08:31
更新:19/11/08 08:47

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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