ひみつの秘密基地

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「合言葉は?」
「しょーとけーき!」
「よし」
森の中、小さな小屋のドア越しに合図を交わして、扉を開ける。
森の奥の人目につかない木造の小屋は、僕らのとっておきの秘密基地だった。
学校が終わると僕らは家から駄菓子や漫画を持ち寄って、いつもそこへ集まった。
チーム名を付けたり、マークを考えてみたり、おもちゃの武器を作ってみたり。
本当になにかをするわけじゃないけど、集まるだけでその場所は、僕らを特別なワクワクでいっぱいにしてくれた。


「真田君、どうかした?」
「あ、いえ……」
仕事の打ち合わせで訪れた喫茶店の壁に掛けられていた絵に、俺は目を奪われた。
その絵が、昔遊んだ秘密基地にそっくりだったからだ。
見れば、思い出そうとせずとも、脳内にあの景色が満ちる。
「ご注文は?」
店員から問われ、俺は思わずショートケーキと返した。

窓のない店内に風が吹き抜けて、ふわりと花の匂いがした。
青春
公開:19/03/20 00:15
更新:19/03/20 05:04
絵画コンテスト蔵出し

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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