白い絵画

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祖父から譲り受けた真っ白な絵画がある。これが画家としての最後の遺作となった。

俺は幼くして両親を失い祖父に育てられた。祖父の死後、暫く施設で世話になり、社会人となったが、人間関係で反りが合わず、コンビニのバイトに成り下がった。

夜、あの絵を眺めながら、俺は眠った。
「理想の未来を描いてみろ」
祖父の声に瞼を開けると、白いカンバスに何か鉛筆のタッチで描かれている。人物のようにも見える。

バイトから帰宅すると、デッサンが完成していた。家族が食卓で幸せそうに笑っている。無意識下でそんな理想を描いていたのかも知れない。その向こうに行きたくなった。手を伸ばす。家族の誰かに腕を掴まれた瞬間、俺は絵の中に溶け込んでいった。

「よく来たね。今日からウチの子よ」

「この話、白紙に戻してください」
全員が真っ白だった。俺は額縁から飛び出して、画材を持ち出した。全員美男美女にしよう。新生活が楽しみだ。
ファンタジー
公開:19/03/20 00:02

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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