花神の庭~終宴。咲くや此の花(三)

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「いいえ」
衣の下に現れた女性は、目を細めて微笑った。絶世の美姫と謳われる木花開耶姫(このはなさくやひめ)には、控え目過ぎる。泰然とした穏やかさ。美しさより、素朴な温かみを感じる。
「瓊瓊杵(ににぎ)の君の妻、木花開耶は、妹です」
「もしかして、磐長姫(いわながひめ)?」
妹の木花開耶姫と共に、瓊瓊杵の許へ嫁いだ、永代の寿命を持つ姫。しかし、容姿の醜さを疎まれ返された。それゆえ、瓊瓊杵は長寿を受け損ね、人は短命になった。返された磐長姫が呪い、人の命を縮めたとする説もある。
微笑む磐長姫は、恨みを抱く様には見えなかった。向き合って、むしろ心が安らぐ。

『人も神も、等しく弱く愚かよ。過ち苦しみ、それでも求める』
過去に因縁があるにせよ、あの瓊瓊杵が、他人の外面を貶めるとも思えない。
磐長姫と、岩永百合。姓の符合も、偶然なのか。
「あの方が、私を返されたのは事実です」
姫の微笑が、やや曇った。
ファンタジー
公開:19/03/18 08:00

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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