花神の庭~寄生木(やどりぎ)下

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「僕はイサナだ。伊弉諾(いさなき)じゃない」
目を瞠る伊邪那美(いさなみ)は、幼い百合にも似ていた。狂女の裏、踏み躙られた純真。
「お前の夫にもなれない。僕は百合を愛してる」
認めてしまえば呆気ない。百合と出会って僕が始まった。僕をイサナにしたのは百合で、彼女との時間が僕の全部だ。
「きょうのゆうひのくだちの、おおはらへにはらへたまひきよめたまふことを」
――パシン!
「もろもろ、きこしめせとのる」
――パシン!
百合の影が膨れ、絡まって寄生木を作る。闇が僕達を呑もうとした。

ざくん――疾風双閃、鎌鼬が闇を刈る。小さな緑の背、翻る草摺り衣。
「喚べ、イサナ!」
考える暇はない。ありったけで喚ぶ。
「百合!!」

揺らぎ、壊れていく寄生木は、白骨の成れの果て。身体は朽ちていたか。涙が頬を伝った。
光の矢が二本、上昇気流に乗り夜を駆ける。
腕の中で百合の瞼が開いた。噛み付く様に唇が重なった。
ファンタジー
公開:19/03/17 19:00
寄生木(やどりぎ):征服・ 困難に打ち克つ・私にキスして ※イメージ:ケルト神話 寄生木の下のキス

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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