私は何も

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「ねえ、ママ」我が子がそう言うのならいいのだけれど、赤の他人から言われると恐怖でしかない。

今、私の目の前に見知らぬ男の子がいる。恐怖心を抑え、ここは大人の対応をしておく。「どちらさま?」「僕のこと、覚えてないの?」「誰かしら」「変なこと言わないでよ」変なことを言っているのはそっちの方だと言おうとしたが、押し問答になってしまいそうなので軽く受け流す。「ごめんなさいね。私、記憶力には自信がないの」「ママのそういうところ僕は好きだよ。僕の誕生日を覚えてないからって、月に一回はプレゼントを買ってきてくれたもんね。ま、それも覚えてないよね」私は頭のいかれた子に出会ってしまったのかもしれない。それとも、おかしいのは私?「それで、私に何の用?」「今日で僕がこの世を去ってから一年が経ったんだ。久しぶりにママに会いたいと思って。僕を殺したこと、もう許してるから安心して」

私は何も覚えていない。
ミステリー・推理
公開:19/03/18 22:12

上北 うてな

行き場を失い、メモ帳に彷徨うネタ達をここで消化&昇華させてます。

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