涙はミズイロ

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 今年もこの季節がやってきた。心が重い。
 我が社では、新人教育にかなり力を入れている。縁あって入社した若者。大切に、大切に育てたいのだ。
 ゆえに入社すると、一人一人に専門の教育係をつけている。この人物は新人それぞれのデータを分析し、本人の性格・生い立ち・夢・嗜好のすべてに対応した唯一無二の存在だ。
 この教育係は実に優秀だ。
 褒めて伸びる子もいれば、黙って見守るだけで成長していく子もいる。同性を好む子もいれば、親くらい離れた歳に心を開く子もいる。結果、成果は素晴らしいものだった。
 五月。教育が終わり、私の仕事が始まる。
「サトルくん……ガンバッタネ……」
「ハブカさん……リッパニナッタネ……」
「ミス・ケイ……キミナラ、ダイジョウブ」
 ロボットたちはみな愛しい教え子を想い、ミズイロの涙を流している。私もかつての師を想いながら、そっとリセットを押した。
SF
公開:19/03/18 15:27
更新:19/03/19 15:38
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二森ちる( 瞑想と妄想の森で )

二森(ふたもり)ちると申します。
人生の節目に、二つ目の名前をつくりました。童話や小説などはこの名で執筆しています。
怪談やホラー系は「鬼頭(きとう)ちる」名義で活動しています。
どうぞよろしく。

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