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スキー場で謎の失踪事件が起こった。
リフトに乗った客の何人かが煙のように消え、付近を捜索しても何の痕跡も見つからないというのだ。

「ハハハ、こりゃ最初から誰も乗ってなかったんじゃねえのか?」
おどける調子で言う警部に俺は釘を刺した。
「いえ、一緒に来ていた家族からも捜索願いが出ていますし、山を降りた形跡もありません」
「そうか⋯⋯」
手掛かりをつかもうと、俺と警部はリフトに乗ってもう一度山の上まで登ってみる事にした。

「チッ、霧が出てきたな」
霞む雪山を二人で眺めていると、霧の奥で何かがゆらゆらと揺れたような気がした。
「あれっ!?」
目の錯覚に違いない、そう思っていると野太い声が聞こえた。
コノ人間ハ 不味ソウダナ。
「ど、どこから声が!?」
分カッテナイネェ コウイウノガ 意外ト 旨インダヨ。

リフトの両側には、巨大な箸を持った二匹の巨人が、大きな口を開けて待ち構えていた──。
ホラー
公開:19/03/18 13:06
更新:19/03/24 13:58

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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