異動先の影

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異動の季節がやってきた。俺たちには名前などない。ころころと部署を変えては与えられた仕事を全うし、結果として、ヒトという個体を維持するのに一役買っている。

いま俺がいるのは鼻水工房。言わば影の仕事だ。コックピットのような狭い空間で、大量の鼻水をつくり出す。そのダークなスキルに目が止まったのか、今回の異動先もミステリアスな響きがある。

変なところ。そう、急いで何かを食べたりした時に、ちょっとした物が入り込んじゃう、あの謎多き部署だろう。

脳みそあたりのエリート街道に興味はないが、場所すらはっきりしない異動先なんてよ。俺にしか務まらねえ大役かもな。

食道と肺の分岐点で道を教えてくれた奴らなんて、ヒソヒソと俺の噂をしているぜ。わっはっは。あばよ。下っ端ども。

「あいつ何者だ」
「何にせよ、あそこ行くなら左遷だろ」

ヒトの身体が大きくうねり、激しい咳とともに何かが勢いよく飛んでいった。
ファンタジー
公開:19/03/16 23:31

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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