花神の庭~紙垂境祈(しでのさかき)
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庭に散った昼顔の葉や蔓を集め、山を作る。いつも温厚な榊(さかき)の花神(はなかみ)に、剪定がてら枝をもらう。紙垂(しで)と草摺り衣の切れ端を結わえ、幣(ぬさ)を拵えた。
世の穢れを黄泉へ祓う祓戸神(はらえどのかみ)が、黄泉路に赴く。洒落にしても笑えない。出さなかった井戸の酒を桶に満たし、経代わりの祝詞(のりと)を。
「とよあしはらのみづほのくにを、やすくにとたひらけくしろしめせと、ことよさしまつりき。かくよさしまつりし」
気吹戸主(いぶきどぬし)の旅が穏やかな様に。直接言えば、また水を引っ掛けられるな。少し微笑い、唇を噛んだ。
『これは我が役ぞ。汝(なれ)は見定めよ』
命を賭してまで、彼が伝えた意味は何だったのか。
もうすぐ望月。伊邪那美(いさなみ)が僕の許へ来る。僕はこの先、伊弉諾(いさなき)の代替というだけの籠の鳥。
雪催いの空に芒(すすき)は揺れず、焚き上げの煙は真っ直ぐ昇った。
世の穢れを黄泉へ祓う祓戸神(はらえどのかみ)が、黄泉路に赴く。洒落にしても笑えない。出さなかった井戸の酒を桶に満たし、経代わりの祝詞(のりと)を。
「とよあしはらのみづほのくにを、やすくにとたひらけくしろしめせと、ことよさしまつりき。かくよさしまつりし」
気吹戸主(いぶきどぬし)の旅が穏やかな様に。直接言えば、また水を引っ掛けられるな。少し微笑い、唇を噛んだ。
『これは我が役ぞ。汝(なれ)は見定めよ』
命を賭してまで、彼が伝えた意味は何だったのか。
もうすぐ望月。伊邪那美(いさなみ)が僕の許へ来る。僕はこの先、伊弉諾(いさなき)の代替というだけの籠の鳥。
雪催いの空に芒(すすき)は揺れず、焚き上げの煙は真っ直ぐ昇った。
ファンタジー
公開:19/03/16 20:00
更新:20/03/05 01:46
更新:20/03/05 01:46
榊(さかき):ひかえめな美点・
揺るがない・神を尊ぶ
気吹戸主、追悼回<(_ _)>
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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