盗人猛々しい

俺はガキの頃、手癖が悪かった。欲しいものはすぐに盗んでいた。
天は俺に盗みの才能を与えた。一度もバレたことがない。
そんな俺が中学の時に出会ったのが野球だ。これが意外と面白かった。
特に俺の盗塁技術は群を抜いていて、その技だけで野球の名門高校へ進学が決まった。
俺は高校でも周りの技術をどんどん盗んでいった。メキメキと実力をつけ、周りは俺をキャプテンと呼ぶようになった。
それでも俺は盗むことをやめない。ありとあらゆる試合で技術や戦略を盗んだ。トレーニングメニューも盗んでやったぜ。
そして気づけば俺は甲子園優勝を果たしていた。
プロからのお呼びもかかった。ドラフト一位指名でプロ野球入りした俺はそれからも活躍した。
ただ寄る年波には勝てん。俺は選手引退を決めた。
そんな俺は今、コーチをしている。こんなこともあろうかとコーチング技術を盗んでおいたんだ。
凄いだろう。才能ってのはこうやって使うんだ。