花神の庭~華燭の昊(かしょくのそら)下

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漸く線が繋がった。
僕が人間の記憶をほとんど持たない理由。名前も顔も思い出せない理由。花守り(はなもり)の知識と役目以外知らず、それに疑問も不満も持たず、生死に伴う苦痛も単に苦痛としか意識出来なかった理由。
無いからだ。自我も感情も形成される暇なく死んだから。南天が写した僕の蓄積は、あれが最期でなく、あれで全部。
七月七日は、人間の僕の命日で、誕生日。
僕が人間として生きた時間は、一日にも満たなかった。

納得すると、不思議と心が晴れた。
時が停まった作り物の肉体。動力としての魂。『イサナ』という記号。
たとえそうだとしても、ここにいる僕は僕だ。人間だろうが人形だろうが、花守のイサナという僕しか存在しない以上、これは僕の体で、僕の命。
僕は今、僕を生きている。

「己を信じ、道を拓け」
霧が透け、茜の空が目に沁みた。
蟷螂(かまきり)が僕の肩で鎌を研ぐ。
今夜、伊邪那美(いさなみ)が来る。
ファンタジー
公開:19/03/17 15:00
南天(南天燭・難転): 私の愛は増すばかり・よい家庭 ※華燭=華やかな灯り・絵蝋燭 また、華燭の典は結婚式の美称

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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