春風の秘密
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春の香りをはらんだ風が吹き抜けていった。ある日突然いなくなった友人のことを思い出した。
「今自分がいるのとは違う世界で、新しい生活を始められる水晶玉……これが?」
古い雑貨屋に、二人で行ったときのこと。彼は、鼻を鳴らしてそう言った。
「ええ、今いる世界とほとんど同じ、作り物の世界がこの中に入っているのです。」
店主は更に続ける。
「ですが、一度この中に入ったら二度と出ることはできませんので」
その日、水晶玉は買わずに帰った。
そんなある日、彼は姿を消した。部屋の中には、日頃の辛いことを綴った日記と、例の水晶玉が転がっていたらしい。
雑貨屋の店主から、後日聞いたことがある。
作り物の世界と僕らのいる世界は、少しだけ繋がっていて、向こうの世界で彼が、僕の今いる場所あたりを通ると、そこだけに風が吹くのだそう。
彼は元気でやっているだろうか。
春の風は、少しだけ寂しい気持ちになる。
「今自分がいるのとは違う世界で、新しい生活を始められる水晶玉……これが?」
古い雑貨屋に、二人で行ったときのこと。彼は、鼻を鳴らしてそう言った。
「ええ、今いる世界とほとんど同じ、作り物の世界がこの中に入っているのです。」
店主は更に続ける。
「ですが、一度この中に入ったら二度と出ることはできませんので」
その日、水晶玉は買わずに帰った。
そんなある日、彼は姿を消した。部屋の中には、日頃の辛いことを綴った日記と、例の水晶玉が転がっていたらしい。
雑貨屋の店主から、後日聞いたことがある。
作り物の世界と僕らのいる世界は、少しだけ繋がっていて、向こうの世界で彼が、僕の今いる場所あたりを通ると、そこだけに風が吹くのだそう。
彼は元気でやっているだろうか。
春の風は、少しだけ寂しい気持ちになる。
ファンタジー
公開:19/03/14 23:51
更新:19/03/15 00:13
更新:19/03/15 00:13
新生活
たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!
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