もののあはれ

6
8

元々は僕も明るい世界にいたんだ。けれど自分の居場所では無い気がして、暗く静かな世界へ逃げ込んだ。
最初は煩わしい雑音から解放されて居心地良いなんて思っていたけれど、何年も経つにつれ寂しさや虚しさ、マイナスの感情に支配されていった。
自ら陥った境遇なので誰かに責を問えず、自分を呪うしかない。人を呪わば穴二つなんて言葉があるそうだが、自分を呪うには穴一つで事足りる。

でもこのままじゃダメだって気付いたんだ。
だから僕は外に出た。今までの自分の殻を破って新しい自分に生まれ変わる。

太陽というスポットライトが昇り、陸が暖められて海から風が吹き上げる。木々の葉が奏でる葉音の拍手は次第に強さを増し、僕の門出を祝福する。

生まれ変わった僕……いや、俺の歓喜の叫びを聞かせてやる。耳の穴をかっぽじる必要なんて無いくらいにでっかい声で聞かせてやる。行くぜ!


「ミーンミンミンミー ミーンミンミンミー」
青春
公開:19/03/14 21:51
更新:19/03/14 21:52

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容