いつか咲く花

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 タンポポの綿毛が、風に乗って窓の外からやってきた。
 タカシは、頬に触れた綿毛のかすかな感触に目を覚ました。
 上半身を起こしたタカシの口元からは、糸が引いている。机の上に広げてあるノートには、水たまりのようなよだれのシミができていた。
「あ……もう朝か。昨日もダメだったな……」

 タカシは夜になると路上ライブをしに出かけては、帰ってきて曲作りをするという毎日を送っている。しかし、一向に売れる気配はない。昨日のライブでも、足を止めた人はごく僅かで、ほとんどの人はタカシに見向きもしなかった。しまいには、「うるせえ!」と怒鳴る人もあった。
「俺は本気で音楽をやってんのに、なかなかこの想いは伝わらないもんだなぁ」
 タカシはノートにコードの続きを書きながら、大きく口を開けてあくびをした。
 次の瞬間、頬についていた綿毛は、はらりと宙に浮き、窓から飛んで行った。

 花が咲くのは、まだ先の話。
青春
公開:19/03/14 20:39
更新:19/03/15 20:16

花脊タロ( 京都 )

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