垂れ下がる紐

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 暇だったので、近所の公園へ行って芝生に寝転んだ。
 いつの間にか、うとうとしていたらしい。目を開けると真っ青な空に太陽がまぶしい。午後二時頃だろうか。額の上の方で、チラチラと何かが揺れているのが見えた。虫かと思ったが、それは、一本のとてつもなく長く垂れ下がる紐だった。
 周囲に柱や木はない。『蜘蛛の糸とか?』と思いながら、手を伸ばして紐を捉え、そっと引っ張ってみた。
 カチ。という感触がして、周りが薄暗くなった。太陽が、遠くにある夕日みたいになっていた。その色と感触とは何だかとても懐かしかった。
 『実家の座敷の蛍光灯は三回カチカチやると電気が消えたんだよな』
 そんなことを思って、もう一度カチリと紐を引いた。太陽が消え、周りは真っ暗になった。
『でも、大丈夫。もう一回引けば蛍光灯は全部つくんだ』
 カチリ。
 チカチカと稲光が走り、周りが真っ白になった。

 地球は一瞬で蒸発した。
SF
公開:19/03/16 06:56

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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