花神の庭~病葉(わくらば)結

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「伊邪那美(いさなみ)」
先とまるで違う温度で、僕は『彼女』を呼んだ。
百合の意識には聞こえていないだろう。いつから僕達を監視し、何処で入り込んだか定かでないが、我ながら迂闊な事だ。
根国底国(ねのくにのそこのくに)に開いた伊邪那美の箱庭。花守り(はなもり)の僕も繋がれて出られない。普通の人間が、彼女の許諾なく、自由に出入り出来るものか。
「人の身は窮屈でかなわぬ。なれどこうまでせねば、汝(なれ)は吾(あ)を見まい、伊弉諾(いさなき)」
「今すぐ百合に身体を返せ」
「汝が吾を妻と呼び、夫婦に返るならば」
彼女の望みは結局そこだ。元々僕は彼女の人形で、抗えば抗う程、他者を巻き込み、奪い、滅ぼすだけ。
「承った」
「嬉しい、伊弉諾。……漸く想いが通じた」
憐れで淋しい女神。原初の昔から、どの僕にも拒絶され続けたのか。
「次の望月に、汝が許へ参る」
百合が何も知らない事が、せめてもの救いだった。
ファンタジー
公開:19/03/15 23:00

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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